クモ(蜘蛛)
概要
クモは、糸を出し、虫や小動物を捕食する、鋏角を持つ節足動物です。
他言語での表記
英語 | spider | スパイダー |
イタリア語 | ragno | ラーニョ |
スペイン語 | araña | アラーニャ |
ドイツ語 | Spinne | シュピンネ |
フランス語 | araignée | アレニエ |
イメージや象徴
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クモには、「巧妙な策略」「狡猾さ」「幸運」「運命」「母性」などのイメージや象徴的な意味があります。
キリスト教・聖書におけるイメージ
『マタイによる福音書』で、救世主イエス・キリストの誕生を知り、自分の権力を奪われることを恐れたヘロデ王が、(どの子がキリストか分からないため)乳幼児をすべて殺すことにします。
そこで、イエスの両親や人々は、自分の子供を守るためにエジプトへ逃げることを決意し、洞窟に一時避難します。
追手の兵士たちが洞窟の前まで来ますが、洞窟の入り口にあるクモの巣が壊れてないのを見て、誰もいないだろうと思い、洞窟の中までは入りませんでした。イエスの家族と人々が洞窟に避難した後に、小さなクモが入り口に新しく巣を張ってくれたのです。
この物語のように、クモはイエスを守るために神から送られた使者として、「神の守護」「神の護り手」を象徴する場合があります。
また、クモが入った聖杯は、聖ノルベルトゥスの持物でもあります。
ミサの最中に、聖ノルベルトゥスの聖杯の中に毒蜘蛛が入ってしまいましたが、彼は聖杯の中身を捨てることをためらい、毒蜘蛛ごと飲み干しました。
持物(じもつ・じぶつ)とは
西洋美術におけるアトリビュート(attribute)のこと。
特定の神や聖人を象徴する、あるいはそれらを身に着けた姿で描かれたアイテムや動物、あるいは特定の行為や場面を表すものを指す。
具体的には、キリスト教の聖人たちがよく持っている様々なアイテム(聖具)が代表的。
一方で、中世では、クモは悪の象徴としても用いられました。
巧妙な策略
クモは巧妙に網を張り、獲物を捕らえるための策略を巡らせます。
その緻密な作業や戦略的な行動は、知恵や計画性の象徴として捉えられます。
悪意と狡猾さ
敵を罠にかける様子から、悪意や狡猾さを表す場合があります。
強欲
小さな昆虫(=貧しい者)を食い物にする様子から、強欲さを象徴する場合があります。
富や幸運
クモを見ると、お金が手に入る、幸運が訪れるなどという肯定的な迷信があります。
例えば古代ローマの人々は、仕事の成功を願ってクモのお守りを付けていました。
家を守る
ハエトリグモやアシダカグモは、家の中にいる害虫(疫病や不衛生のもとになる虫)を食べてくれることから、家を守る虫として扱う文化があります。
日本では、「家の中のクモは殺してはいけない」という言い伝えも残っています。
危険や不安
クモは、一部の人々にとって恐怖や不快感を引き起こす存在です。
その特徴的な外見や、毒を持つ種類も存在することから、危険や不安の象徴として解釈されることがあります。
知識や神秘性
クモは知識や神秘性の象徴としても解釈されます。
これは、クモが作り出す網の模様には、何か意味やメッセージがあると考えたためです。
また、クモは知識や創造力を司る女神や、神聖な存在と結び付けられることもあります。
運命や宿命
クモの糸は、運命や宿命を象徴することもあります。
クモが張った網に触れた生物がもがき翻弄される様子は、人間の運命や宿命を表現するために使われることがあります。
母性
クモは母性の象徴としても描かれます。
クモが自身の身体で卵を守り、子供たちに食べ物を与える様子は、母性愛や愛護の象徴として解釈されることがあります。
また、クモが糸を編む様子は、家族のために編み物をする母親の姿を連想させることから、「母性」のイメージが付いたという説もあります。
高度な工芸や技術
クモは、高度な工芸や技術の象徴としても使われます。
クモの網はもつ精巧な構造や緻密なデザインは、職人技や創造性を表します。
天国と地獄を繋ぐ糸
クモの糸の象徴的な文学作品として、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』が有名です。
釈迦が地獄を覗くとカンダタという男がおり、彼は1度だけ善行(クモを殺さず生かす)をしていたため、彼を救おうとクモの糸を垂らしました。
男は糸に掴まり登り始めましたが、ふと下を見ると他の罪人たちも登ってきていたため、このままでは糸が切れると思った男は「この糸はおれのものだぞ」「降りろ」と叫びました。
男が叫んだ瞬間にクモの糸は切れ、釈迦は自分だけ助かろうとした男を悲しく見つめて立ち去りました。
アラクネ
アラクネは、機織り競争で女神アテナに勝ってしまい、怒り狂ったアテナにむち打ちにされて死んでしまった少女の名前です。
不憫に思ったアテナは、アラクネを1匹のクモに変えました。
関連作品
クモが、モチーフやシンボルとなった作品を紹介します。
ママン(彫刻)
フランス出身の彫刻家ルイーズ・ブルジョワの作品(1999年)。
日本では、森美術館や、六本木ヒルズ森タワーの広場で展示されています。
このクモは、巣(家庭)が壊されても我が子のために一生懸命糸を紡ぎ続ける母親を象徴しています。
ルイーズの家はパリでタペストリーを修繕する工房でしたが、父親は自分の家庭教師と愛人関係にあり、母親はその関係を黙認している様子だったそうです。
母親はルイーズが21歳の時に謎の病によって亡くなりました。
土蜘蛛草紙(絵巻物)
源頼光がの土蜘蛛を退治する物語を描いています。
現存する最古のものは、14世紀ごろに描かれた『土蜘蛛草紙絵巻』。
笑う蜘蛛(絵画)
フランスの画家オディロン・ルドンの作品(1887年)。
オディロン・ルドンは、象徴主義の画家であり、シュルレアリスムの先駆者として有名です。
他にも人間の顔を持つ植物や動物を描いており、似た作品で『泣く蜘蛛』があります。
シャーロットのおくりもの(小説)
1952年に発表されたアメリカの児童文学で、クモに対して「母性」「母親」といった印象を感じさせる物語として挙げられる作品です。
原題は、“Charlotte’s Web” 。
ウィルバーというオスの子豚と、シャーロットというメスのクモの友情物語です。
ゆくゆくは食肉用に殺されてしまう子豚のウィルバーの悲しい運命を知り、シャーロットは知恵と行動で彼を救おうとします。
蜘蛛の糸(小説)
1918年に発表された日本の短編小説。
釈迦が地獄を覗くとカンダタという男がおり、彼は1度だけ善行をしていたため、彼を救おうとクモの糸を垂らしました。
クモのイト(書籍)
2019年に発表された日本の書籍。
もしもクモがいなかったら?
蜘蛛の「糸」と「意図」が人間と生物を支配している!?
その驚くべき生態と「クモの知恵」をまとめた一冊です。
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コメント一覧 (1件)
蜘蛛と言う漢字を、久しぶりに見て、改めて、どんな意味があるのか、調べてみました。とても、面白かったです、ありがとうございましたました。