ヘビ(蛇)

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概要

ヘビは、長い体と鱗を持つ爬虫類です。四肢を持たず、地上や水中で生活し、毒を持つ種もあります

他言語での表記

英語snakeスネイク
イタリア語serpenteセルペンテ
スペイン語serpienteセルピエンテ
ドイツ語Schlangeシュランゲ
フランス語serpentセルパン

イメージや象徴

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ヘビには、「再生」「執着」「嫉妬」「知恵」「狡猾」「毒」「医療」「永遠」「不死」などのイメージや象徴的な意味があります。

キリスト教・聖書におけるイメージ

The Brazen Serpent, Anthony van Dyck, 1618-1920

ヘビは、エデンの園ではずる賢く誘惑する者として描写されています。

一方で、旧約聖書のモーセと青銅のヘビの話で、イエス・キリストが自身を青銅のヘビに例えたように、神聖なものや慈悲深いものを表す場合もあります。

このように、ヘビは悪や敵など邪悪なものを表すこともあれば、善を表すこともあるため、両義的なシンボルとして知られています。

変化、再生

ヘビは脱皮(だっぴ)することによって古い姿を捨て、新しい姿に生まれ変わることから、変化や再生の象徴とされます。
ヘビの脱皮は新たな成長や進化を象徴し、人生の変化や転機を表すシンボルとして捉えられます。

脱皮を繰り返して成長する強い生命力から「不老不死」を象徴する場合もあります。

呪縛、執着

ヘビが何かに巻き付く姿は、そのものへの呪縛や執着を意味します。

転じて、ヘビが心臓や命(ハートの形をしたモチーフ等)に巻き付く様子は、病気や疾患を表す場合があります。

嫉妬

七つの大罪を動物で表す場合に、「嫉妬」の罪はヘビの姿になります。

知恵、秘密

ヘビに唆されたアダムとイヴが知恵の実(禁断の果実)を食べてしまったことで、人間は善悪の知識を得ました。
このため、ヘビには知恵(悪知恵)のイメージがあります。

また、地を這うヘビは地下や暗闇と関連づけられ、隠された知識や神秘的な領域を象徴することもあります。

狡猾、凶悪

ヘビは、「狡猾」や「凶悪」の象徴となる場合があります。

特に、『ハリー・ポッター』では主人公のライバル・マルフォイが所属するスリザリン寮は、ヘビが寮の象徴とされています。
スリザリンの寮生は、野心的、狡猾、リーダー的で成果主義、純血の生まれである傾向が強いとされています。

ヴォルデモートの蛇・ナギニ、『ハリーポッターと秘密の部屋』で登場した大蛇・バジリスクなどをはじめ、ヘビが凶悪な存在として登場し、不吉な予兆を感じさせる場面でもヘビが登場します。

毒、薬

ヘビの毒は、良薬になると考えられていたため、毒や薬と関連付けられることがあります。
また、ヘビは最も賢く神に近い動物と考えられたため、「薬学に精通した存在」として人間に不死の妙薬を与えるものとして描写されることもあります。

医療

ヘビは、医療の象徴としても知られています。
古代ギリシャの神アスクレピオスの杖にはヘビが巻き付いており、医療や癒しの力を象徴しています。
この象徴は、現代の医療機関のシンボルとしても広く使用されています。

永遠、無限

自分の尾を噛んで円環状になったヘビを図案化したものをウロボロスと言い、永遠や無限を表します。

頭と尾が繋がり終わりと始まりがないことから時間の循環や永遠性をイメージさせ、転じて不老不死や輪廻などを象徴します。

幸運、金運上昇

日本の出雲では、神々が集う10月を「神在月」と呼びます。全国の神々のもとへ先触れ告げるため(あるいは竜宮の使いとして)遣わされるのは龍蛇神です。龍蛇神は、災難除けや縁結び、幸運を授ける神様として信仰されています。

また、日本ではヘビは弁財天の使い(あるいは弁財天の化身)であるとされ、金運に結びつく生き物だと言われており、蛇の夢をみると縁起が良いと言われます。

他にも、日本では「ヘビの抜け殻を財布に入れておくと金運が上がる」と信じられています。

蛇神、ヘビの神霊

ケツァルコアトル

アステカ神話の文化神・農耕神です。
マヤ文明ではククルカンという名で崇拝されていました。

オピーオーン

ギリシャ神話の蛇神です。オリュンポスの原初の支配者と言われています。

ナーガ

ヒンドゥー教や仏教の伝説に登場する蛇神や、半人半蛇の神霊です。
蛇の体を持ち、知恵や力、または守護の象徴とされ神聖視されています。

ヨルムンガンド

北欧神話に登場する毒蛇の幻獣で、「大いなるガンド(精霊)」を意味します。
他にも「ミッドガルドの大蛇」「世界蛇」とも呼ばれます。
邪神ロキの子供で、終末に海から陸に上がり、雷神トールと戦い共倒れします。

宇賀神

日本で信仰される神です。身体がとぐろを巻いたヘビで、頭が人間の姿をしており、財をもたらす福神として祀られています。

関連作品

ヘビが、モチーフやシンボルとなった作品を紹介します。

ヘビを連れた天使(絵画)

The angel with the serpent, Evelyn de Morgan, 1870s

ラファエル前派の画家イーヴリン・ド・モーガンの作品(1870年頃)。

深紅の翼と衣をまとった天使が、花に囲まれた場所に座っています。

この絵には様々な解釈があります。
ヘビの悪いイメージから「死の天使」や「アダムとイヴをエデンの園から追放した天使」と解釈される場合や、天使とヘビが愛しあっているような様子からロマンスや官能的な解釈をされる場合もあります。

罪(絵画)

The Sin, Franz Stuck, 1893

ドイツの画家フランツ・フォン・シュトゥックの作品(1887年)。

シュトゥックは神話を描く画家として有名で、『罪』で高い評価を受けました。

裸の女性に大蛇が巻き付いています。
女性の顔には影がかかり、逆らうような視線をこちらへ向け、雪のように白い裸体が妖艶に誘います。

右上のオレンジ色は地獄の炎を表すとされ、彼女に魅了され近づくと焼かれてしまいます。

インフェルノ(絵画)

Inferno, Franz Stuck, 1908

同じくフランツ・フォン・シュトゥックの作品(1887年)。

オーギュスト・ロダンの『地獄の門』と『考える人』の像からインスピレーションを受けた作品とされています。

大蛇が身体に巻き付いています。

白いへび眠る島(小説)

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2005年に発表された日本の小説。

高校最後の夏、主人公は久しぶりに故郷の島に帰省する。

島は古くからの因習が残っており、十三年ぶりの大祭をひかえ高揚する空気の中、言葉にするのも恐れられる怪物『あれ』が出た、とうわさが広まる。

日本では白いヘビは、縁起の良い動物として信仰の対象になっています。

蛇 日本の蛇信仰(書籍)

蛇 (講談社学術文庫)

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1999年に発表された日本の書籍。

古代日本は蛇信仰のメッカであった。

蛇に対する強烈な畏敬と物凄い嫌悪、日本各地の祭祀と伝承に鋭利なメスを入れ、洗練と象徴の中にその跡を隠し永続する蛇信仰の実態を大胆かつ明晰に検証する意欲的論考である。

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