フクロウ(梟)

目次

概要

フクロウは、夜行性の鳥類で、太くて柔らかな羽毛と、大きな目が特徴です。

優れた聴覚と視覚を持ち、静かに空を滑空して獲物を見つけ、鋭い爪で捕まえます。

表記:ふくろう、ミミズク

他言語での表記

英語owlオウル
イタリア語gufoグーフォ
スペイン語búhoブーオ
ドイツ語Euleオイレ
フランス語hibou chouetteイブー、シュエット

イメージや象徴

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フクロウには、「知恵」「賢者」「長老」「幸運」「ハンター」「悪魔」「魔術」「暗闇」「孤独」「凶兆」「死」などのイメージや象徴的な意味があります。

キリスト教・聖書におけるイメージ

注意

聖書の翻訳バージョンによっては、同じ箇所で異なる単語や意味が使われることがあります。

そのため、聖書内の特定の事物におけるイメージや象徴的な意味は、翻訳バージョンによって異なる可能性があります。

フクロウは旧約聖書にのみ登場します。

イスラエル人が不浄とみなして食べることを禁じられていた鳥(穢れた鳥)の中に、フクロウも含まれています。

鳥の中では、次のものは食べてはならない。はげわし、はげたか、みさご(タカ科の鳥)、はやぶさの類全部、とび、からすの類全部、だちょう、よたか、かもめ、たかの類全部、ふくろう、鵜、みみずく白ふくろう、ペリカン、野がん、こうのとり、さぎの類全部、やつがしら、こうもり。

レビ記 11:13-17(JCB 聖書)

また、太陽を嫌い闇を好み、荒れ地に住むフクロウは、「暗闇」「孤独」「夜の怪物」「荒廃」「死」の象徴として登場することもあります。

絶望して嘆き、うめき続けたこの身は、骨と皮だけになりました。
まるで、はるか遠い荒野に住むはげたかや、仲間からはずれて荒野をさまようふくろうのようです。
屋根にとまった一羽の雀のように孤独をかみしめ、一睡もできずに身を横たえているのです

詩篇 102:5-7 (JCB 聖書)

この場面のフクロウは、神の怒りに触れ見捨てられた「空虚さ」や「孤独」を表しているとされています。

また、聖書内で記述された小さなフクロウ(コキンメフクロウ)を指すアラビア語には、「廃墟の母」という意味があります。

知恵、知識

フクロウの一般的なイメージは、「知恵」や「知識」です。

このイメージは、知恵・学問・芸術・戦略などを司るギリシャ神話の女神・アテナ(ミネルヴァ)が従える鳥がフクロウだったことが起源だとされています。
このフクロウは「ミネルヴァのフクロウ」として有名です。

また、フクロウの特徴的な目には「万事を見通す」「不正を見逃さない」といったイメージがり、フクロウが法の番人や正義の象徴とされることもあります。
このため、フクロウのシンボルは知性・理性・公正性などの象徴とされ、学校・研究機関や法機関のロゴに用いられることがあります。

特にフクロウは、「フクロウ博士」のように動物の中でも博識なイメージがあり、博士キャラクターのモチーフとして採用されることがあります。

賢者、長老

フクロウには「賢者」のイメージがあります。
物語において、フクロウは「森の賢者」「物知りな長老」として登場することがあります。

動揺『年老いた賢いフクロウ(A Wise Old Owl)』では、次のように語られています。

There was an owl liv’d in an oak
The more he heard, the less he spoke
The less he spoke, the more he heard.
O, if men were all like that wise bird.

樫の木に住むフクロウがいました。
彼は聞くほど話さず、話すほど聞きました。
話さないことで、彼はより多くのことを聞きました。
ああ、もし人類が皆、あの賢い鳥のようだったら。

A Wise Old Owl

ここでは、「聞くことの重要性」と「話すことの慎重さ」を表しています。
言葉を慎重に選び、他人の意見や情報を注意深く聞くことで、賢明な判断を下すことができるという教訓です。

また、日本ではフクロウの鳴き声は「ホーホー」と表します。
この鳴き声が、老人の笑い声を表す「ほっほっほっ」に似ていることから、フクロウに対する「年老いた」というイメージが強まった可能性があります。

ちなみに、フクロウよりもオウムやカラスのほうが賢いとされています。
オウムやカラスは、ヒトの4~5歳児並の知能レベルであり、フクロウの知能はそれらに及びません。
しかし、フクロウは視覚・聴覚・運動能力がたいへん優れています。

幸運

インドでは、フクロウは「富」「繁栄」「幸運」などの象徴と考えられています。
ヒンドゥー教では、鳥は「神の乗り物」であり、フクロウは女神・ラクシュミーの乗り物です。
新月の夜、フクロウに乗ったラクシュミーが闇を追い払い、人々に光と幸運をもたらすと言われています。

ヒンドゥー教の神や祭祀は一部形を変えながらも、日本の仏教に強く影響しています。
このため、日本でもフクロウは「幸福をもたらす鳥」として捉えられ、ネガティブなイメージが少ないと考えられます。
フクロウには「福来郎(福が来る)」「不苦労(苦労せず)」などといった縁起のよい当て字もあります。

他にも、アイヌではシマフクロウを守護神・コタンコロカムイとして信仰していたり、フランス語で「C’est chouette(セ・シュエット ※直訳で「フクロウだ」)」は「いいね」「素敵」を意味したり、フクロウにはポジティブなイメージがあります。

狩猟者、ハンター

フクロウは、優れた聴覚と視覚を持ち、静かに空を滑空して獲物を見つけ、鋭い爪で捕まえます。
暗闇の中、音もなく狙った獲物を素早く捕らえる様子は、まさに「森のハンター」です。

物語において、優れた狩猟技術をもつ人物、闇討ちをする人物、じっと身動きせず警戒して寝ずの番をする人物などをフクロウに例えることがあります。

死の前兆、凶兆

さまざまな文化で、フクロウは死の前兆であると信じられています。
日本でも「フクロウが鳴くと人が死ぬ」という迷信が残っている地域があります。

フクロウが近くに現れることは、不運、疾病、死などが身近に起こる前触れだという考えが今でも残っています。

魔物、悪魔

暗闇の中、静かに鋭い爪で獲物を狙うフクロウは、恐ろしい存在として扱われていました。
フクロウは普段は穏やかな性格ですが、繁殖期は攻撃的になり、実際にヨーロッパではフクロウが人を襲う事件が現在でもいくつか発生しています。

ネイティブアメリカンなど一部の文化では、「夜に出歩くとフクロウに攫われる」と子供に言い聞かせたり、行儀の悪い子供に対しては「フクロウが捕まえに来るよ」と言ったりすることがあります。

フクロウの悪魔として有名なのは、ストラス(ストロス、ソラス)です。
このフクロウの悪魔については、『ソロモンの鍵(17世紀/作者不明)』『ゴエティア(17世紀/作者不明)』『地獄の辞典(19世紀/コラン・ド・プランシー)』などの魔術書(グリモワール)や書籍に記載されています。

『悪魔の偽王国(16世紀/ヨハン・ヴァイヤー)』では、ストラスは地獄の王子であり、26の軍団を指揮し、天文学や植物、宝石に関する知識を与える存在でもあります。
これらの知識は魔術や儀式に必要であるため、悪魔にとってもストラスは重要な存在だと考えられています。

魔術、使い魔

フクロウの生態(猛禽類、夜行性)、神秘的なイメージや、知恵の象徴であること、不吉や死の予兆と考えられたことなどから、フクロウが魔術に関連することがあります。

フクロウが、魔術の材料になることもあれば、魔女の使い魔とされることもあります。

関連作品

フクロウが、モチーフやシンボルとなった作品を紹介します。

死んだワシフクロウ(絵画)

Édouard Manet, Dead Eagle Owl, 1881

フランスの画家エドゥアール・マネの作品(1881年)。

この作品は、療養中のマネが重病から回復している際にベルサイユで描いた静物画シリーズの一つです。

フクロウが釣り下がっているようにも見えることから、絵画として壁に掛けた際に「だまし絵」として機能するように描いたとも言われています。

他にも、死や凶兆の象徴であるフクロウが死んだ様子は、病に打ち勝ったマネの心象も表しているとも考えられます。

25歳のジェームズ・ボズウェル(絵画)

James Boswell, 1740 – 1795. Diarist and biographer of Dr Samuel Johnson, George Willison, 1765

スコットランドの肖像画家ジョージ・ウィリソンの作品(1765年)。

スコットランド出身の法律家・作家のジェイムズ・ボズウェルの若かりし頃を描いています。

知恵、知識、賢さの象徴であるフクロウをともに描くことで、その人物が知的で優秀であることを権威付けています。

残酷の第三段階 – 残酷の完成(絵画)

The Third Stage of Cruelty: Cruelty in Perfection – The Murder, William Hogarth, 1751

イングランドの芸術家ウィリアム・ホガースの作品(1751年)。

『残酷の4段階』は4枚組の版画集で、空のキャラクター「トム・ネロ」の生涯を段階的に描いています。

最初の段階では子供時代にを拷問、第二段階では馬を打ち、そして第三段階では強盗、誘拐、殺人と進みます。
最終的に『残酷の報い』では、彼がたどった道のりの結末として、処刑された後の遺体が絞首台から取り下ろされ、外科医によって解剖台で切り刻まれる光景が描かれています。

ロンドンの街頭で見た日常的な残虐行為に失望したホガースが、道徳的な教訓のために描いたとされています。

この作品の左上に見えるフクロウは、「暗闇」「夜」「死」などの象徴と考えられます。

勉強と恋の天才との夜(絵画)

A Noite e os Gênios do Estudo e do Amor, Pedro Américo, 1883

ブラジルの画家ペドロ・アメリコの作品(1883年)。

ペドロ・アメリコの作風は、当時のトレンドと合わせ、新古典主義、ロマン主義、現実主義の要素が融合しています。

ルネサンス美術に描かれる翼の生えた裸の幼児(プット)は、題材がキリスト教の場合は「天使」で楽器を持つことが多く、題材がギリシャ・ローマ神話の場合は「キューピット(エロース)」で弓矢や松明などを持つことが多いです。
左のキューピットは松明を持っており、知識や研究の「情熱」を象徴しているとされています。

この作品に描かれるフクロウは「知識」「研究」「夜」を表します。

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