ブタ(豚)
概要
ブタは、イノシシを家畜化した動物で、主に食用として飼育されます。
広範囲な食性、多産、学習能力の高さ、人馴れしやすさといった特性があります。
ブタは味覚と嗅覚が非常に発達しており、特に嗅覚は犬以上に匂いを区別することができます。
表記:ぶた、豚肉、ポーク、pig、hog、swine
イメージや象徴
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ブタ(豚)には、「不浄」「暴食」「欲望」「贅沢」「豊饒」「贄」「可愛らしい」「綺麗好き」などのイメージや象徴的な意味があります。
キリスト教・聖書におけるイメージ
不潔、不浄
ブタは旧約聖書の律法において「不浄な動物」とされており、食べることが禁じられています。
豚、これは、ひずめが分かれており、ひずめが全く切れているけれども、反すうすることをしないから、あなたがたには汚れたものである。
あなたがたは、これらのものの肉を食べてはならない。またその死体に触れてはならない。これらは、あなたがたには汚れたものである。
レビ記 11:7-8(JCB 聖書)
暴食、色欲
ブタはしばしば暴食や色欲の象徴としても描かれます。
ブタが食べ物を貪る姿は、暴食の象徴として使われ、また、貪欲な性質は色欲とも関連付けられます。
黒ブタとサタン
特に黒いブタは、サタンや悪の象徴とされることがあります。
これは中世のヨーロッパにおける信仰や迷信に由来し、暗黒や邪悪を連想させるためです。
新約聖書での言及
新約聖書でもブタに関する記述があります。
例えば、イエスが悪霊をブタの群れに追い込む話が有名です。
この話によって、ブタが悪霊の宿る動物と見なされ、さらに不浄であるという観念を強化しました。
悪霊どもはイエスに願って言った、「もしわたしどもを追い出されるのなら、あの豚の群れの中につかわして下さい」。
マタイによる福音書 8:31-32(JCB 聖書)
そこで、イエスが「行け」と言われると、彼らは出て行って、豚の中へはいり込んだ。すると、その群れ全体が、がけから海へなだれを打って駆け下り、水の中で死んでしまった。
これらの点から、キリスト教や聖書におけるブタは、多くの場合ネガティブな象徴として描かれ、人間の堕落や罪、悪の象徴として用いられます。
ブタ飼いの聖アントニウス
一方で、ブタは聖人と結び付けられることもあります。
聖アントニウスは、ブタ飼いたちの守護聖人として崇敬される聖人です。
これは、聖アントニウスが祈りの時間を守るために、時間を知らせる忠実なブタを伴侶にしていたという伝承に基づいています。
この伝承に基づき、聖アントニウスはしばしばブタを伴った姿で描かれます。
汚れ、不潔
ブタはしばしば「汚れ」や「不潔」の象徴として扱われます。
これは、ブタが泥の中で寝転がったり、食べ物をむさぼる姿があるためです。
このイメージは、文化や宗教によって異なりますが、一般的には清潔さや品位とは反対のイメージとして認識されます。
愚かさ、醜さ
ブタが「愚かさ」や「醜さ」を象徴するのは、歴史的・文化的な描写などに基づいています。
ブタを不浄な動物とする聖書の影響や、ブタのように食べ物に執着することは愚かなことだという飽食文化の考え、愚かで下劣なキャラクターとして描かれた寓話や文学作品などによって、ブタに「愚か」「醜い」というイメージがついたと考えられます。
『オデュッセイア』では、ギリシア神話に登場する魔女キルケーは、男性をブタに変えます。
これは、男性の野蛮な本能や愚かさを象徴的に表現しています。
ブタに変えることで、彼らの欠点(貪欲、野蛮、色欲など)を外面的に具現化し、キルケーが彼らを制御する手段として機能しています。
食欲、快楽
ブタは、「快楽的な食事」や「食欲」を象徴することもあります。
欲望、贅沢
ブタは食欲や快楽を象徴するだけでなく、「欲望」や「贅沢」の象徴としても見られます。
ブタが自制心を持たずに食べ物をむさぼる姿は、人間の欲望を表現する際にしばしば用いられます。
ダンテの『神曲』地獄篇では、傲慢な人間は「泥の中のブタ」のようになると述べています。
How many are esteemed great kings up there,
Who here shall be like unto swine in mire,
Leaving behind them horrible dispraises!”そこには尊敬される偉大な王が何人いるだろうか、
Inferno Canto VIII 49-51 Translated by Henry Wadsworth Longfellow
ここにいる者は泥沼の豚のようになるだろう、
彼らにひどい屈辱を残してください! ※自動翻訳
豊饒、繁栄
ブタは多産であり、一度に多くの子ブタを産むことができるため、「豊饒」や「繁栄」の象徴として捉えられることがあります。
ブタは豊かな収穫や繁栄を象徴するシンボルとして、農耕社会や農業に関連する文化ではしばしば見られます。
贄、捧げもの
ブタには、「贄」や「捧げもの」というイメージがあります。
古代エジプトでは、ブタを大量に飼育しており、神々への生贄として捧げていました。
これは、ブタは軽蔑されるどころか、神聖な存在と見なされていたことを示しています。
他にも、ギリシャ、ローマ、ゲルマン、スカンジナビア、ケルトなどでも、ブタは神を讃えるための重要な犠牲として用いられました。
しかし、中世のキリスト教社会では、ブタに対する見方が徐々に変わりました。
ブタは常に鼻で地面の食べ物を探し、天を見上げない動物とされ、その行動が卑しいものと見なされました。
また、動物の排泄物や死骸を食べる習性により、不潔で下劣な動物と見なされ、サタンの象徴とされるようになりました。
特に中世のブタは黒い毛で覆われており(見た目としてはイノシシに近い)、神の光を見ることができない視力の弱い動物として、悪魔的な存在と結び付けられました。
現代においても、ブタが「捧げもの」のイメージを持つことは続いていますが、その意味合いは大きく変わりました。
宗教的な儀式における犠牲としての役割は減少し、むしろブタは食用としての価値(人間に食べられる動物というイメージ)が強調されるようになりました。
それでもなお、ブタに対する古代からのイメージは、文化や宗教的なコンテクストにおいて影響を与え続けています。
可愛らしい、綺麗好き
近年、ブタ(特に子ブタや小型のブタ)は「可愛らしい動物」として人気があります。
小さくて丸みを帯びた体形や柔らかい毛皮、口角が上がって笑っているように見える顔など、愛嬌のある姿やころころとした動き、そして人懐っこい性格から、ブタをペットとして飼う人が増えています。
さらに、ブタが実は「綺麗好きな動物」であることも知られるようになりました。
ブタは定期的に泥浴びや水浴びを行い、排泄する場所と眠る場所、食べる場所を自分で区別して生活します。
この清潔な習性が、ブタのイメージ向上に寄与しています。
関連作品
ブタ(豚)が、モチーフやシンボルとなった作品を紹介します。
ブタ顔の女性(伝承)
ブタ顔の女性に関する伝承は、1630年代後半にオランダ、イングランド、フランスでほぼ同時に生まれました。
体は普通の人間の女性ですが、顔がブタのような女性について語られています。
ブタ顔の女性の伝承は、特にイギリスのタナキン・スキンカーの寓話が有名です。
この寓話は、醜い女性の典型的な物語であり、『バースの女房の物語』や『ガウェイン卿の結婚』に基づいています。
この寓話は17世紀の大衆文化に広りましたが、現在ではほとんど忘れ去られています。
3匹のこぶた
動物農場(小説)
飲んだくれの農場を追い出した動物たちは、すべての動物は平等という理想を実現した「動物農場」を設立した。
守るべき戒律を定め、動物主義の実践に励んだ。
農場は共和国となり、知力に優れたブタが大統領に選ばれたが、指導者であるブタは手に入れた特権を徐々に拡大していき……。
権力構造に対する痛烈な批判を寓話形式で描いた風刺文学の名作。
シャーロットのおくりもの(小説)
子ブタとクモのシャーロットのかけがえのない友情を描いた児童文学。
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