ヒト(人間)
概要
ヒト(人間)は、広義にはヒト亜族に属する動物全般を指し、狭義には現生人類であるホモ・サピエンスまたはホモ・サピエンス・サピエンスを指します。
表記:ひと、人類
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各宗教の人間観
キリスト教における「人間」とは
神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された。
創世記 1:27(JCB 聖書)
キリスト教では、人間は神の姿に似せて創造された尊い存在です。
神は人間を深く愛し、イエス・キリストを犠牲にするほど大切にしています。
このため、どんな人間も価値ある存在とされ、人を蔑んだりすることは許されません。
人間は神の愛の対象であり、神の意志によって存在しています。
- 隣人:自分と同じように神に愛される存在として他者。
- 迷える子羊:迷いや罪の中にある人間。
イスラム教における「人間」とは
イスラム教では、人間は全知全能の神によって創造された被造物であり、宇宙や自然界と同じく神の存在を示すものとされています。
人間に与えられた世界の全ての存在は神の恩恵の証であり、この世界が存在すること自体が神の存在と愛を示しています。
したがって、人間は神の恩恵に感謝し、神の存在を確信する存在と見なされています。
- カリフ:地上の神の代理人としての人間。
- アブドゥッラー:神の僕、神に仕える人間。
- ムスリム:イスラム教を奉ずる、もしくは行なう人間。
仏教における「人間」とは
仏教では、人間は生まれ変わりと死を繰り返す六つの世界の一つであり、他の世界と同様に苦しみから逃れられない存在とされています。
仏教の目的は、この苦しみから解脱して極楽浄土に達することです。
日本浄土宗の宗祖である法然上人は、「人間は知恵も行動も十分でない」と表現しました。
- 凡夫(ぼんぷ):煩悩に囚われた愚かな人間。普通の人間。
- 衆生(しゅじょう):生きとし生けるもの、特に救済を必要とする人間。
イメージや象徴
ヒト(人間)には、「神に愛される存在」「神に創造された被造物」「苦しみから逃れられない存在」「知性」「芸術」「倫理」「支配」などのイメージや象徴的な意味があります。
知性
ヒトには知的なイメージがあります。
ヒトは高度な知能を持ち、抽象的な思考や複雑な問題解決ができます。
学名の「ホモ・サピエンス」は「知恵のある人」を意味します。
サル
ヒトは霊長類の一員であり、特に類人猿と多くの共通点を持っています。
遺伝学的にもチンパンジーなどと高いDNAの一致率を持ち、行動や身体的特徴でも類似点が多く見られます
道具
ヒトは道具を製作し、これを使用して環境を変えたり、作業を効率化する能力を持っています。
古代から現代に至るまで、石器から高度な技術を駆使した機械やコンピュータまで、さまざまな道具を開発・使用しています。
社会
ヒトは複雑な社会構造を築き、文化や文明を発展させる力を持っています。
都市、国家、経済システム、法制度、教育機関など、多様な社会構造と文化を形成し、継承しています。
芸術
ヒトは芸術や音楽、文学などの創造的な活動を通じて、美や感情を表現する能力を持っています。
絵画、彫刻、音楽、詩などの形で、無数の芸術作品を生み出し、人類の精神的・文化的な遺産を豊かにしています。
倫理
ヒトは善悪の判断や倫理観を持ち、道徳的な行動をする能力があります。
哲学的な倫理学の発展や、宗教的な教義、法制度に見られるように、人間は倫理や道徳に基づいて行動を規範化しています。
探究
ヒトは世界や宇宙の謎を解明しようとする強い探究心を持っています。
科学技術の進歩により、自然界の法則を理解し、医療、物理学、天文学などの分野で画期的な発見を続けています。
貧弱
ヒトには他の動物に比べて「貧弱」なイメージがあります。
ヒトは道具や技術がなければ他の動物に対して防御や攻撃の能力が劣るためです。
身体的には多くの動物に比べて力や速さ、自然の中での生存能力が低く、鋭い爪や牙、防護する厚い皮膚なども持たないため、特に捕食者や過酷な自然環境に対して脆弱です。
これは道具や社会的な協力がなければ生存が困難であることを意味し、ヒトが本質的に弱い存在とされる一因です。
支配
ヒトには「支配」のイメージがあります。
他の動物を使役し、自然環境を変える能力を持っているためです。
ヒトは知性と技術を駆使して、農業や牧畜を行い、家畜やペットとして動物を飼い慣らし、工業化や都市化によって環境を大規模に改変してきました。
これにより、他の動物や自然に対して支配的な立場を築いてきたため、ヒトは支配者のイメージを持たれるようになりました。
人間中心主義と環境主義
「人間は他の動物とは違う」というヒューマニズム(人間中心主義)という思想があります。
ヒトは特別な存在とされ、動物を食べたり実験に使うことが許される一方で、ヒトに対しては同じ行為が許されません。
一方では、環境主義という思想もあります。
ヒトも他の生物と共に「宇宙船地球号」の乗組員と見なされ、共存が重視されます。
関連作品
ヒト(人間)が、モチーフやシンボルとなった作品を紹介します。
ウィトルウィウス的人体図(絵画)
ルネサンス期を代表する芸術家であるレオナルド・ダ・ヴィンチの作品(1487年頃)。
男性の体が四肢を広げて円と正方形の中に収まるように描かれており、古代ローマの建築家ウィトルウィウスの理論をもとに人間の体の比率を示しています。
この図は、ルネサンス期の芸術と科学との融和を試みたものであり、レオナルドが人体の比率に強い関心を持っていたことを象徴する作品でもあります。
後世では医学に関するシンボルとして用いられるようになりました。
人間とは何か(書籍)
『トム・ソーヤの冒険』で知られるマーク・トウェインの作品。
死の4年前に匿名で遺した伝説の名著。
「人間は機械である」
トウェインの「人間機械論」とは、人間は生育環境や教育によって思想を形成され、自由な決定といっても無制限の「自由意志」ではなく「選択の自由」にすぎないのである。
千年たっても変わらない人間の本質(書籍)
人間の姿を生き生きと描き、千年たってもまったく色褪せることのない平安時代の文学作品は、現代の私たちに役立つ知恵と勇気の宝庫だ!
今をよく生きるための古典文学入門。
人間はどこまで家畜か(書籍)
「一生 壁の中から出られなくても……メシ食って寝てりゃ生きていけるよ…でも…それじゃ…まるで家畜じゃないか…」――『進撃の巨人』の主人公、エレン・イェーガーの台詞です。
「一生 壁の中から出られなくても……メシ食って寝てりゃ生きていけるよ…でも…それじゃ…まるで家畜じゃないか…」――『進撃の巨人』の主人公、エレン・イェーガーの台詞です。
実際のところ、人間はどこまで家畜なのでしょう?
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