ハエ(蝿)
概要
ハエは、小さな昆虫の一種で翅を持ち、食べ物やゴミに集まることがあります。
表記:蝿、蠅、あぶ
他言語での表記
英語 | fly | フライ |
イタリア語 | mosca | モスカ |
スペイン語 | mosca | モスカ |
ドイツ語 | Fliege | フリーゲ |
フランス語 | mouche | ムーシュ |
イメージや象徴
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「火事の前にネズミは逃げ出す」「桃を食って川に行くと河童にひかれる」など、日本全国に伝わる俗信を徹底収集した一冊です。
ハエには、「死」「邪悪」「不快」「疫病」「腐敗」などのイメージや象徴的な意味があります。
キリスト教・聖書におけるイメージ
キリストのそばに描かれたハエは、キリストの死を象徴しています。
他にも聖書の中では、ハエは疫病と死を運び手とされています。
ヘブライ人(イスラエル人)の奴隷を解放するよう、神がファラオを威嚇するためにエジプトにもたらした 10 の災いの中に、ハエ(あぶ)の災いがあります。
邪悪、不快
蝿はよく不潔な場所に現れるため、不快や不衛生なイメージを抱かせる存在とされます。
そのため、ハエは、邪悪、汚れ、病気、災害など、ネガティブな要素を象徴することがあります。
また、ハエの容姿も邪悪や不快と関連づけられる要素となっています。
ハエは一般的に黒い体色と光沢のある外見を持ち、小さな頭部に大きな赤い目を持っています。
その見た目は一部の人にとっては不気味で不快に映ることがあります。
煩わしさ
ハエは人々の周りに集まることがあります。
そのため、ハエは煩わしさや迷惑な存在を表すことがあります。
特にハエは、食事の場や屋外での活動時に現れることが多く、飛び回る様子やブンブンという音が、イライラやストレスを引き起こすことがあります。
死
ハエは死体や腐敗物に集まるため、死の象徴とされます。
ハエは腐肉や排せつ物などの腐敗した有機物を主な餌としています。
そのため、ハエが死体の周りに集まる光景は比較的一般的であり、死と結び付けられる要因となっています。
疫病
ハエは汚れた場所や廃物などに触れ、その後に人間の食品や傷口などに接触することがあります。
このような行動によって、ハエは病原体が病原菌を運び、拡散する可能性があります。
昔からハエは疫病の発生や拡大と関連付けられてきました。
特に衛生状態が悪く、下水処理や衛生管理が不十分だった時代には、ハエが病原体を媒介して疫病の広がりを助長する要因となりました。
このような背景から、ハエは疫病の象徴とされることがあります。
文学や芸術などでも疫病や汚染、不衛生さを表現する際に、ハエのイメージが用いられることがあります。
不純物
ハエは不純物を象徴する場合もあります。
「ハエが入った牛乳」「死んだハエの入った軟膏は臭い」など、些細なことから全体がダメになってしまうことのイメージや喩えとしても用いられます。
ベルゼブブ
ベルゼブブは、キリスト教の悪魔の一つで、悪と混沌の象徴とされる存在です。
伝説では、彼は地獄の王や堕天使の一人とされ、害虫たちを支配する力を持つと言われています。
ベルゼブブはしばしばハエの姿で描かれ、邪悪な力を象徴する存在として文学や宗教の中で登場します。
マスコミやゴシップ記者
ハエが人々の周りに集まり、しつこく飛び回る様子は、常に監視や干渉をされているような感覚を与えることがあります。
また、腐敗物や人にハエが集まる様子は、ゴシップに群がるマスコミやゴシップ記者の比喩として用いられる場合があります。
だまし絵
ただし、絵画に描かれるハエは「死」「邪悪」などのイメージとは異なる場合があります。
イタリア画家のジョットが、師匠の絵にハエを描き込んだところ、師匠が本物のハエだと思い何度も追い払おうとした、という有名なエピソードがあります。
このエピソードが伝わり、15世紀から16世紀にかけてわざとハエが描かれるようになったと言われています。
時には自分の写実的技法を誇示するため、時には古典的技法の知識を披露するため 時には単なる画家の悪戯として、絵画にハエが描かれてきました。
絵画においてハエが腐敗や死を象徴する場合もありますが、だまし絵のハエはどこか愛嬌を感じさせます。
関連作品
ハエが、モチーフやシンボルとなった作品を紹介します。
蠅の王(小説)
1954年に発表されたイギリスの小説。
戦争から離れ、疎開地へ向かう飛行機が墜落。
無人島に漂着し、生き残ったのは子供たちだけ。
子供たちが次第に暴力や野蛮さに陥っていく様子を描いた作品です。
人間の本性や文明の崩壊をテーマにし、社会的な規範や秩序の欠如について考察されています。
冬の蠅(小説)
1928年に発表された梶井基次郎の短編小説。
季節は冬、温泉地で療養生活を送る「私」が部屋の中に棲みついているハエたちを観察する物語です。
『冬の蝿』執筆中の梶井基次郎は肺結核を患っており、4年後の1932年に亡くなります。
ハエの生を通して、自らの死を自覚せざるを得なかった「私」と死を意識していた作者が重なります。
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