カタツムリ(蝸牛)
概要
カタツムリは、陸に住む巻貝の一種で、特徴的な螺旋状の殻を持つ陸生の軟体動物です。
表記:かたつむり、マイマイ、でんでんむし
他言語での表記
英語 | snail | スネイル |
イタリア語 | lumaca | ルマーカ |
スペイン語 | caracol | カラコル |
ドイツ語 | Schnecke | シュネッケ |
フランス語 | escargot | エスカルゴ |
イメージや象徴
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カタツムリには、「怠惰」「忍耐」「自己防衛」「マイペース」「無意識」「幸運を運ぶ」などのイメージや象徴的な意味があります。
キリスト教・聖書におけるイメージ
カタツムリは、女性器に似ていることから多産の象徴とされています。
《受胎告知》に描かれているカタツムリは、マリアの処女性や母性を表します。
この絵画(フランチェスコ・デル・コッサの『受胎告知』)においては、絵画の中央左あたりに上空に浮かぶ神が描かれており、「天空の神」と「地を這うもの」の対比としてカタツムリが描かれたという説もあります。
怠惰
カタツムリは、その歩みの遅さや殻(自己世界)に閉じこもって他者との関わりを断絶するイメージから、「怠惰」の象徴とされてきました。
「罪は怠惰によって引き起こされる」「怠惰は最も重い罪である」という考えから、カタツムリが罪人や原罪(アダムとイブが神に背いて犯した罪)を表す場合があります。
忍耐
カタツムリは、ゆっくりとした動きで進むことで知られています。
そのため、時間をかけて進むことや忍耐力を持つことの象徴とされます。
また、カタツムリの殻は外敵から身を守る役割も果たしており、困難や逆境に対して耐える力を象徴するとも言われています。
自己防衛
カタツムリの殻は自己防衛のために使われます。
危険を感じると身を引っ込め、殻の中に隠れることで身を守ることができます。
この特性から、自己防衛や退避の象徴として捉えられることがあります。
マイペース
カタツムリはゆっくりとした歩みから、マイペースさを表す場合があります。
生と死の循環
古代文明において螺旋(らせん)は、生と死の循環や再生のサイクル、さらに太陽系の惑星や地球の回転を表していました。
生と死の循環や惑星の回転を表すことから、螺旋は時間と宇宙そのものの本質を表していると考えられていました。
そのため、古代文明人(シュメール人やバビロニア人)は「螺旋の殻をもつカタツムリは不滅である」と考え、永遠の象徴としていました。
意識と無意識
カタツムリの硬い殻は意識を表し、内側の柔らかい体は無意識を表すとして、心理学やスピリチュアルな学問で象徴的に用いられる場合があります。
幸運を運ぶ
カタツムリは、「幸運を運ぶ」というイメージがあります。
カタツムリは丈夫で長寿であると考えられ、のんびりと前に進む姿勢から、運気や幸運がゆっくりとやってくるようなイメージが付いたという説があります。
寄生虫
カタツムリは、住血吸虫症、血管強虫症、筋膜症、オピストルキア症、蛭虫症、ロイコクロリディウムなどの危険な寄生虫症を持っている場合があります。
飢餓の食べ物
歴史上では、通常は食用としない種類のカタツムリが、飢餓の食糧として時々食べられてきました。
1800年代に書かれたスコットランドの歴史書には、疫病の時代の食料品として、様々な種類のカタツムリについて詳しく説明されていました。
雌雄同体
カタツムリは、オスとメスの区別がなく、同一個体で雌雄の生殖器をもっている「雌雄同体」です。
そのため、「雌雄同体」が連想させる「神秘」「神聖なもの」「進化」などのイメージがある場合もあります。
内耳
蝸牛(かぎゅう)は内耳にある感覚器官で、カタツムリ管とも呼ばれています。
蝸牛は、カタツムリの殻のように渦巻状で、硬い殻に覆われているため、カタツムリを由来に名付けられました。
豆知識
カタツムリと騎士の戦い
1290年から1310年頃の中世の装飾写本(宗教的な写本に装飾頭文字や豪華な飾りを付けたもの)には、カタツムリと戦う騎士の絵が何度も登場します。
学者のリリアン・ランドール氏によると、このカタツムリは当時のヨーロッパで反逆的で非騎士道的な行動で非難されていたロンバルド人(ランゴバルド人とも言う)を表しているそうです。
中世ヨーロッパにおいてカタツムリは、貪欲で卑怯で意地汚い、侮辱の象徴でした。
カタツムリ女子
「カタツムリ女子」とは、働きすぎずに自分のケアと幸せを優先する女性のことを指します。
あまり外出せずに、家にこもってスローライフを楽しむ女性のことを指す場合もあります。
「カタツムリ女子」は2023年頃から登場した言葉で、仕事とキャリアを優先してバリバリ働くキャリアウーマン「バリキャリ女子」とは正反対の言葉として対比されることが多くなっています。
関連作品
カタツムリが、モチーフやシンボルとなった作品を紹介します。
そろそろ登れカタツムリ(小説)
1965年に発表されたロシアの小説。
ソビエト時代のロシアのSF作家兄弟・ストルガツキー兄弟の作品。
森林管理局から〈森〉を目指す物語と、森の奥深くから〈町〉を目指す物語の2つの物語で構成される。
言語学者のペレツは、待ちわびた「森林管理局」に到着するが、何度申請しても通行許可証が拒否されてしまう。
森林管理局のカンディードは、森に住む一部の住人が進化し、森を完全にコントロールし、単為生殖をしていることを知った。
かたつむりがやってくる(小説)
2019年に発表された日本の小説。
大学を辞めて田舎に戻ってお年寄りのために移動販売を始めた主人公。
父と再婚したフィリピンの義母を受け入れられないまま話が進んでゆきます。
心が晴れるような、温かくて優しい物語です。
食堂かたつむり(小説)
2010年に発表された日本の小説。
同棲していた恋人にすべて奪われた衝撃から、主人公の倫子は自分の声をも失う。
山あいの故郷に戻った倫子は、小さな食堂を始める。
それは、一日一組のお客様だけをもてなす、決まったメニューのない食堂だった。
蝸牛(狂言)
日本の伝統芸能である狂言には「蝸牛(かぎゅう・かたつむり)」という演目があります。
蝸牛を探すよう主人に命じられた太郎冠者は、蝸牛をまったく知りません。
「頭は黒く、腰に貝をつけ、折々角を出し、藪にいる」という蝸牛の特徴を教えてもらった太郎冠者は、とんでもないものを蝸牛だと勘違いして持ち帰ります。
蝸牛考(狂言)
蝸牛を表わす方言は、京都を中心としてデデムシ→マイマイ→カタツムリ→ツブリ→ナメクジのように日本列島を同心円状に分布する。
それはこの語が歴史的に同心円の外側から内側にむかって順次変化してきたからだ、と柳田国男は推定した。
すなわちわが国の言語地理学研究に一時期を画した方言周圏論の提唱である。
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