月(moon)

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概要

月(moon)は、地球の唯一の衛星であり、直径は約3,476 km、地球の約1/4の大きさです。

月の表面はクレーターや山、谷、平原などで構成されており、地球からは主に白や灰色に見えます。
また、満ち欠けによって月の明るさが変化する現象が知られており、1か月(約29.5日)の周期で満ち欠けが繰り返されます。

月は、人類にとって重要な役割を果たしており、古くからカレンダーや農業、宗教的な意義などに利用されてきました。
また、アポロ計画によって、人類は1969年にはじめて月面に着陸することに成功し、宇宙探査の分野においても重要な役割を果たしています。

他言語での表記

英語moonムーン
イタリア語lunaルナ
スペイン語lunaルナ
ドイツ語Mondモント
フランス語luneリューン

イメージや象徴

『考察事典』おすすめの一冊

イメージ・シンボル辞典

神話、聖書、錬金術、紋章、文学などの観点から、「言葉」や「物事」のもつ象徴的意味とイメージをまとめた事典です。

今は忘れられた民間伝承の解説もあり、考察・参照におすすめの一冊です。

月には、「女性」「マリア」「神秘」「ロマンチック」「変化」「狂気」などのイメージや象徴的な意味があります。

女性

周期的に満ち欠けを繰り返すことから、女性のシンボルとして用いられました。
月が女性のシンボルとなった理由にはいくつか説があります。

一つ目は、月の周期が月経周期と一致していることから、女性性を象徴するものとして捉えられてきたという説。
月が満ち欠けする様子は、女性の生命力や繁栄、再生を表すという説もあります。

二つ目は、月は古くから母性や豊穣、女神と結びつけられてきたことに由来する説。
多くの文化において、月は女神の化身として崇められ、女性の神秘性や魅力、または慈悲深さや穏やかな力を表す象徴となっています。

これらの説に加えて、月の静かで美しい姿が、女性の内面的な美しさを表しているとされることもあります。

キリスト教・聖書におけるイメージ

聖母マリアを「月のように美しい」と形容することがあります。

中世に描かれた《キリスト磔刑》の十字架の両端には太陽と月が描かれており、キリストの「死」と「復活」を意味します。
太陽と月は「男と女」「夫と妻」を表すことから、太陽はキリストを、月は聖母マリアを意味します。

La Inmaculada del Escorial, Bartolomé Esteban Perez Murillo, 1660-1665

聖母マリアの信仰の一つで、キリストを身ごもった聖母マリアは生まれつき一切の罪と穢れを持たないという考えを表す《無原罪の御宿り》の図像では、必ず三日月が描かれます。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョの『エル・エスコリアルの無原罪の御宿り』では、白いドレスと青いマントをまとった聖母マリアが、月の上の登っている。

足元の智天使(ケルビム)たちが持っているバラ、白いユリ、ナツメヤシの葉、は、マリアの「純潔」と「殉教」の象徴だと言われています。

神話におけるイメージ

古代エジプト神話では、ホルスの左目は月を表します。
他にも、バビロンでは月はイシュタルを表し、ギリシャ神話ではアルテミスやヘカテを表します。

神秘

月には多くの神話や伝説があるため、神秘的なイメージがあります。

古代の人々にとって、月の満ち欠けは大変不思議な光景であったため、神秘的な存在として古来より語り継がれてきました。

ロマンチック

Lindisfarne Castle and Abbey, Holy Island, by Moonlight, John Moore of Ipswich, 1877

月や月夜がロマンチックな場面で使用されることがあります。

月光は雰囲気を盛り上げる舞台装置として優れており、月夜は静謐で幻想的な雰囲気をもたらします。
月夜の晩に感傷的な思い出に浸ることもあります。

また、月夜には、超自然的なできごとや不思議な体験が起こるというイメージもあります。

これらの要素が相まって、月夜は詩情あふれる情景や不思議な出来事が生まれる舞台とされています。

変化

形や明るさが変わらない「不変の太陽」に対して、月は満ち欠けによって形や明るさが様々に変化します。
そのため、月には「変化」「移ろい」「変動」などのイメージがあります。

狂気

「ルナティック(lunatic)」や「ルナシー(lunacy)」のように、特に西洋文化において月が「狂気」のイメージや象徴的意味をもつ場合があります。

豆知識

夏目漱石の「月が綺麗ですね」

日本では、「月が綺麗ですね」は愛の告白を意味する言葉で、夏目漱石が由来とされています。

漱石は「I Love You」の訳について、「直接的な愛の表現は日本人には馴染まない。『月が綺麗ですね』で十分だ」と述べた逸話が背景にあります。
直接的な愛情表現よりも、婉曲的な表現が優れているとされた当時の日本人の感性が伺えます。

そのままの意味で受け取られてしまう可能性もあるため、「月が綺麗ですね」というフレーズは、あまり月が見えない時(曇天や雨天など)に使われることが多いです。

関連作品

月が、モチーフやシンボルとなった作品を紹介します。

月と六ペンス(文学)

月と六ペンス

月と六ペンス

モーム
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サマセット・モームによる小説で、画家のポール・ゴーギャンをベースにしています。

新進作家の「私」は、知り合いのストリックランド夫人が催した晩餐会で彼女の夫を紹介される。
特別な印象のない人物だったが…。

創造の悪魔に憑かれた男ゴーギャンをモデルに、最期まで絵筆を手放さなかった男の執念と情熱を描いています。

星月夜(絵画)

The starry night, Vincent van Gogh, 1889

オランダの画家フィンセント・ファン・ゴッホの作品(1889年)。

青い夜空に輝く星々、青白い山、村の暖かな灯りが特徴的です。
この眺めは、東に面した寝室の窓からのものであると特定されています。

月を眺める男と女(絵画)

Man and Woman Contemplating the Moon, Caspar David Friedrich, 1824

ドイツのロマン主義の画家カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの作品(1824年頃)。

この男女は、フリードリヒとその妻、カロリーネがモデルとなっているという説があります。

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