「天使」と「キューピッド」の違いを詳しく解説

絵画、彫刻、文学などで、「天使」や「キューピッド」は人気のモチーフで、さまざまな作品があります。

このページでは、「天使」と「キューピッド」の違いをまとめ、例として有名な絵画をいくつか紹介します。

目次

「天使」と「キューピッド」に違いはある?

はい、天使とキューピッドに違いはあります。
天使とキューピッドはまったく別の存在で、それぞれに特徴があります。

しかし、天使とキューピッドの区別がわかりにくく、どちらか判別できないこともあります。

天使とキューピッドの違いが分かりにくい原因として、次のことが考えられます。

違いがわかりにくい原因

外見が似ている

天使とキューピッドはともに人間のような姿で、背中に翼を持っています。
見た目が似ているため、天使とキューピッドを間違いやすいです。

人によって解釈が違う

長い歴史の中で、天使とキューピッドは、絵画、彫刻、文学などで、多様に表現されてきました。

天使とキューピッドを明確に区別して表現する作品がある一方、天使やキューピッドの描写には、個々のアーティストの解釈やスタイルが反映されているものもあるため、見分けが難しくなっています。

バレンタインイベントでよく見かけるキューピッドを天使だと解釈する人もいるように、天使とキューピッドの区別は時として非常に曖昧になります。

宗教や神話の知識が必要

一般的に、「天使は宗教的な存在」で「キューピッドは神話的な存在」だと考えられています。

しかし、宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)や、神話(ローマ神話、ギリシャ神話)などに馴染みがない文化圏や、あまり興味がない人々にとって、天使とキューピッドの違いはわかりにくい可能性があります。

「天使」とは

The Queen of the angels or The Virgin with angels, William-Adolphe Bouguereau, 1900

天使は、神からの使者や守護者として描かれる超自然的な存在です。
神の意志を人々に伝えたり、人々を守護するなどの役割があります。

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖典や伝承に登場する神の使い(天使)には、特別な名前や階級をもつ天使がさまざま存在します。
ガブリエル、ミカエル、ウリエル、ラファエルなどの七大天使や、アズラーイールやイスラーフィールなどのイスラーム四大天使、熾天使(セラフィム)や智天使(ケルビム)などの階級をもつ天使たちが有名です。

「キューピッド」とは

La Toilette de Vénus, François Boucher,1751

ギリシャ神話やローマ神話に登場する、愛の神であり、恋愛や情熱の象徴です。
キューピッドは矢を射って恋人同士を引き合わせ、愛の力を象徴する存在として知られています。

キューピッドはしばしば幼い姿で描かれ、翼を持ち、弓矢や矢筒を持っています。

日本語では「クピードー」「クピド」「キューピット」とも呼ばれます。

天使とキューピッドの違い

天使とキューピッドの比較表を作りました。

スクロールできます
天使(Angel)キューピッド(Cupid)
外見美しい姿
楽器を持つことがある
頭上に光輪がある場合も
光を放つなど神聖な見た目
幼い姿
弓矢や矢筒を持つことがある
成り立ち神が光から創造した存在愛の女神ヴィーナスの子供
役割神や神聖な存在に仕える
神の意志を伝える
人々を守護する
恋人同士を引き合わせる
恋や愛の力を象徴する
登場する場面宗教的な書物や聖典
神や信仰と関連した物語
ギリシャ語やローマ神話
ロマンチックな愛や恋愛の物語

つまり、天使は神に仕える「宗教的な存在」であり、キューピッドはロマンチックな愛や恋愛の象徴として知られる「神話的な存在」です。

天使やキューピッドの絵画

「天使」と「キューピッド」の違いがわかったところで、実際に絵画を見ていきましょう。

一見すると天使かキューピッドが判断しにくい絵画もありますが、以下の点に注目してみると判別できるかもしれません。

絵画の「天使」
  • イエスやマリアと一緒に描かれている
  • 熾天使(セラフィム)や智天使(ケルビム)の特徴が表れている
  • 神聖さや神々しさを感じる など
絵画の「キューピッド」
  • ヴィーナスと一緒に描かれている
  • 弓矢や矢筒がある
  • 愛や情熱などをテーマにした神話の一場面に見える
  • 気まぐれな性格に見える など

※必ずしも上記の特徴によって見分けられないケースもあるため、予めご了承ください。

天使の絵画

Cherubs (Madonna Sistina), Raffaello Santi, 1512-1513

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖典や伝承に登場する神の使い(天使)には、特別な名前や階級をもつ天使がさまざま存在します。

「ラファエロの天使」で有名なケルビムは、キリスト教では「智天使」でエデンの園の入口を守るなどの役割があります。

ケルビムの姿は人間や動物の特徴を組み合わせたものとして表現され、聖なる存在として崇拝されることもあります。

The Annunciation, Bartolomé Esteban Murillo, ca. 1660
The Virgin of the angels, William-Adolphe Bouguereau, 1881
Angel of the Death, Horace Vernet, 1851
Angel, Abbott Handerson Thayer, 1887

キューピッドの絵画

Galatea, Raphael, c. 1511

キューピッドは、古代神話において、情熱的な欲望や愛、魅力、愛情の神です。
愛の女神ヴィーナスと戦神マルスの息子として描かれることあります。

ギリシャ神話では、キューピッドはエロース(Eros)に相当します。
エロースは一般的には細身の翼を持った若者として描かれますが、ヘレニズム期には肉付きの良い幼児として描かれることもありました。

The Birth of Venus, William-Adolphe Bouguereau, 1879
Vénus et l’Amour, Lambert Sustris, 1550
L’amour mouillé, William-Adolphe Bouguereau, 1891
Amor and Psyche, children, William-Adolphe Bouguereau, 1890

まとめ

「天使」と「キューピッド」の外見、成り立ち、登場場面などを比較し、その違いを紹介しました。

両者に違いはありますが、その描写には個々のアーティストの解釈やスタイルが反映されているため、見分けがつきにくい場合があります。

作品の細部を見つつ「これは天使かな?キューピッドかな?」と考えて鑑賞してみると、より楽しめるかもしれません。

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