パン(bread)

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概要

パンは、小麦粉やライ麦粉などの穀粉を水やイースト、塩などで練り、焼いた食品の総称である。
人類が食用として利用している歴史は古く、紀元前8,000年頃には既に製法が確立されていたとされている。

他言語での表記

英語breadブレッド
イタリア語paneパーネ
スペイン語panパン
ドイツ語Brotブロート
フランス語painパン

イメージや象徴

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パンには、「主食」「多様」「清貧」などのイメージや象徴的な意味があります。

キリスト教・聖書におけるイメージ

キリストは、「命のパン」とも表される。
『マタイによる福音書』の最後の晩餐では、キリストはパンを裂いて「取って食べなさい、これはわたしの体である」と言って弟子たちに渡した。

イエスが十二人の弟子に与えた聖物は、キリストの肉に聖変化したと信じられており、教会ではミサの後に病者に与えるものとしてパンを聖別する習慣がある。

ミサでは、正教会では酵母入りパン、ローマ教会では酵母が入っていないパン(種なしパン)を用いる。

Bartolomé Esteban Murillo, “The Infant Christ Distributing Bread to the Pilgrims(1678)”

《巡礼者にパンを配る幼児キリスト》

スペイン・バロック期の画家バルトロメ・エステバン・ムリーリョが晩年に描いた作品。

幼子イエスが天使に導かれながら巡礼者に聖別されたパンを与える場面が描かれている。

主食

パンは、白米や麺類など同じく主食の1つである。

多様、国際化

パンは世界中で親しまれている食品であり、地域によって様々な種類がある。
日本独自のパンとして、メロンパン、チョココロネ、カレーパンなどがある。

バゲット、クロワッサン、ブリオッシュはフランス、スコーンやイングリッシュマフィンはイギリス、プレッツェルやライ麦パンはドイツなど、各国をイメージさせるパンがある。
そのため、異文化交流やグローバル化の象徴として捉えられることがある。

節制、清貧

パンは古代から庶民の主食として親しまれてきた。
原材料である小麦粉やパン種の調達が容易で、作り方も比較的簡単であるため、貧しい人々でも手軽に食べることができた。
このため、パンは貧しい人々が生活を維持するための重要な食料として捉えられ、節制や清貧といったイメージが定着した。

また、キリスト教においては、最後の晩餐で使われたパンが聖体となり、キリストの身体を表すものとされている。
このため、パンは宗教的な意味合いも持ち、清貧や節制といった教義に基づいた生活を送ることが求められることもあった。

パンは長期保存が可能であることから、過去の戦争や飢餓時には貴重な食料となった。
このような歴史的な背景もあり、パンには節制や清貧といったイメージが根付いたとされる。

Daniele Crespi, “Supper of St Carlo Borromeo(1610-1630)”

《聖カルロ・ボロメオの食事》ダニエレ・クレスピ

カルロ・ボロメオが、聖書を読みながら涙を流し、パンと水だけの質素な食事を取っている様子を描いている。

カルロ・ボロメオは貴族の出の司教でありながら、貧民と同じ食事を取り、禁欲的な生活を送った。

聖人や司教のあるべき姿として賞賛された。

貧富の差

中世ヨーロッパでは、パンは一般的に庶民の主食であり、貧しい人々は粗末な材料で作られたライ麦パンを食べていた。
一方、小麦粉を使った白パンは高価で、富裕層や貴族の食卓にのぼることが多かったため、パンは貧富の差を示す象徴である。

ライ麦入りの茶色いパンは、貧民の食べ物とされ、カビが生えやすく、食べた後は息が臭くなると言われた。

フランス革命

フランス革命時のパン不足は、革命を加速させる一因であった。
当時、フランスの大部分の人々はパンを主食としており、パンの価格が高騰したために飢餓に陥った人々が多数存在した。
フランス政府は、パンの価格を安定させるために多くの試みを実施したが、それでもパン不足は続き、人々の不満を高めていった。
これが革命の火種となり、フランス革命の勃発につながったとされている。

フランス革命の際に王妃マリー・アントワネットが言ったとされる「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」が有名。

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