ザクロ(柘榴)

目次

概要

ザクロ(柘榴)は、赤い果実をつける木の一種で、果実は多くの種子を持ち、甘酸っぱい味が特徴です。

ザクロは、英語で「pomegranate(ポムグラネイト)」と書きます。
これは、ラテン語の「pomum(リンゴ)」と「granatum(多く種のある)」に由来し、「種だらけのリンゴ」を意味します。

ザクロのように赤い宝石のガーネット(柘榴石)や、破片を散らす様子がザクロの種子に似ているグレネード(手榴弾)は、ザクロに由来しています。

他言語での表記

英語pomegranateポメグラネート
イタリア語melagranaメラグラーナ
スペイン語granadaグラナダ
ドイツ語Granatapfelグラナートアプフェル
フランス語grenadeグルナード
ギリシャ語ρόδιロディ

イメージや象徴

ザクロ(柘榴)には、「祝福」「繁栄」「多産」「子孫繁栄」「血」「心臓」「冥界」「美」「不死」「復活」などのイメージや象徴的な意味があります。

キリスト教・聖書におけるイメージ

キリスト教・聖書において、ザクロは多くの象徴的な意味を持っています。

ザクロは、イスラエルの地でよく知られた果実であり、聖書においては主に「実り」「祝福」「繁栄」の象徴として登場します。

ついに彼らはエシコルの谷に行って、そこで一ふさのぶどうの枝を切り取り、これを棒をもって、ふたりでかつぎ、また、ざくろといちじくをも取った。

民数記13:23(JCB 聖書)

それはあなたの神、主があなたを良い地に導き入れられるからである。そこは谷にも山にもわき出る水の流れ、泉、および淵のある地、
小麦、大麦、ぶどう、いちじく及びざくろのある地、油のオリブの木、および蜜のある地、

申命記8:7-8(JCB 聖書)

ザクロは神が祭司の衣装に用いるよう指示した装飾の一部であり、神聖な役割を果たしていることが示されています。

そのすそには青糸、紫糸、緋糸で、ざくろを作り、そのすその周囲につけ、また周囲に金の鈴をざくろの間々につけなければならない。
すなわち金の鈴にざくろ、また金の鈴にざくろと、上服のすその周囲につけなければならない。
アロンは務の時、これを着なければならない。彼が聖所にはいって主の前にいたる時、また出る時、その音が聞えて、彼は死を免れるであろう。

出エジプト記28:33-35(JCB 聖書)

また、ソロモンの神殿の装飾にもザクロの意匠が多用され、その豊かさが神の祝福を象徴しているとされます。

一方、ザクロの木が存在することは国家の財政的・物質的な豊かさを象徴し、ザクロが欠けていることは神の見捨てられを示すものとされます。

なぜ、あなたがたは主の会衆をこの荒野に導いて、われわれと、われわれの家畜とを、ここで死なせようとするのですか。
どうしてあなたがたはわれわれをエジプトから上らせて、この悪い所に導き入れたのですか。ここには種をまく所もなく、いちじくもなく、ぶどうもなく、ざくろもなく、また飲む水もありません」。

民数記20:4-5(JCB 聖書)

このように、ザクロはさまざまな象徴的な意味を持つ果実として、キリスト教の象徴に深く根ざしています。

日本におけるイメージ

ザクロは日本には平安時代に中国から伝わったと考えられています。
日本で育てられたザクロの品種は非常に酸味が強く、食用ではなく鑑賞や薬用を主な目的としていました。

ザクロの形状や色から、損傷した頭部を「ザクロのように割れた頭」と言ったり、物語において「ザクロは人肉の味がする」ものとして描かれることもありましたが、仏教では鬼子母神が手に持つ果実「吉祥果」として子孫繁栄を象徴する縁起の良い果実とされています。

豊穣、繁栄

一つの実に粒のぎっしり詰まったザクロは、「豊穣」「繁栄」を象徴します。
また、赤く鮮やかな果実は生命力を表し、豊かな収穫への願いを象徴することがあります。

花言葉

ザクロの花言葉には、「円熟した優雅さ」「子孫の守護」などがあります。

多産、子孫繁栄

一つの実に多くの種子を含むザクロは、「多産」「子孫繁栄」を象徴します。
また、無数の種が一つの実に集まる様子は 「家族の団結」を意味することもあります。

ザクロの外皮や果肉は血のような深い赤色をしており、割れた果実が血を流すように見えることから、ザクロが「生命の源」や「血」の象徴とされることがあります。

心臓

ザクロが「心臓」の象徴として登場することがあります。
ザクロの果肉や果汁が血のように赤く、果実が心臓(心室)の構造に似ているためです。

また、心臓に似ており、割ると中から無数の種子が出てくるザクロは、「胸に渦巻く無数の感情」「複雑な心境」 などの状態を説明するためのイメージに使用されることもあります。

冥界

ザクロには、「冥界」のイメージがあります。
これは、冥界の神ハデスとペルセポネのギリシャ神話に由来します。

ハデスとペルセポネの神話

冥界の神ハデスは、美しいペルセポネを見初め、彼女を冥界へ連れ去りました。
ペルセポネの母デメテルは悲しみに暮れ、地上は不毛の地となりました。
ゼウスは事態を収めるため、ハデスにペルセポネを返すよう命じましたが、ハデスはペルセポネにザクロの種を6粒食べさせました。
このため、ペルセポネは完全に冥界から解放されることができなくなりました。
最終的に、ペルセポネは一年のうち6ヶ月を冥界で過ごし、残りの6ヶ月を地上で過ごすこととなりました。
ペルセポネが地上に戻ると春が訪れ、彼女が冥界に戻ると冬が訪れるというサイクルが生まれ、四季が誕生しました。
※ペルセポネが食べたザクロの粒数や、地上に戻れる期間などは、様々なバージョンがあります。

この神話において、ザクロはペルセポネを束縛する「鎖」であり、「冥界」を象徴します。

特別な果実

ハデスとペルセポネの神話以外でも、ザクロは特別な果実として扱われています。

ギリシャ神話では、「酒の神ディオニュソスの血が滴り落ちた土から、ザクロの木が生えた」「女神アプロディーテー愛された美少年アドニスの血からザクロが生まれた」など、ザクロは「死者の果実」として「死」と「再生」を象徴します。

また、古代イランのキリスト教では、リンゴではなくザクロが本当の「禁断の果実」であると信じられていました。

このように、ザクロは古代から多くの文化や宗教において「特別な果実」や「神聖な果実」とされてきました。

不死、永遠の命

神話や宗教において、冥府の果実、死者の王に与えられる果実、神の血から生まれた果実、禁断の果実などとされるザクロは、「不死」や「永遠の命」の象徴とされることがあります。

美、魅力

深紅の宝⽯のような種⼦が⼤量に詰まったザクロは、まるでこの世のものとは思えないほど美しく、人々を魅了します。
この美しさから、ザクロが「美」や「魅力」を象徴とされることがあります。

女性

ザクロは、⼥性的なイメージと組み合わされることが多くあります。

ソロモンの雅歌では、ザクロが新婦の美しさを表現するために使われています。

あなたのくちびるは紅の糸のようで、その口は愛らしい。あなたのほおは顔おおいのうしろにあって、ざくろの片われのようだ。

雅歌4:3(JCB 聖書)

古代ローマでは、新婚の女性はザクロの葉で編んだ冠をかぶり、ザクロの果汁は不妊治療に使われていました。
近年でも、ザクロは美容に良い果実として認識されています。

統一、統合

ザクロの果実を割ると、中では無数の種が規則正しく密接に並んでいます。
この様子からザクロが「統一」「統合」「和合」の象徴とされることがあります。

関連作品

ザクロ(柘榴)が、モチーフやシンボルとなった作品を紹介します。

ザクロの聖母(絵画)

Madonna of the Pomegranate, Sandro Botticelli, ca. 1487

イタリアの画家サンドロ・ボッティチェッリの作品(1487年頃)。

この絵画における「ザクロ」の象徴性には様々な議論があります。

  • ボッティチェッリは医学に関心があった。ザクロがちょうど心臓の位置にあり心室に似ているためザクロは「心臓」を表す。
  • 真っ赤な果実のザクロは、キリストの血や受難を表す。
  • ザクロは「死」の象徴であるが、死がなければ復活もない。そのためザクロは「復活」も表す。
  • 聖母マリアの手がザクロを優しく包んでいる。マリアのキリストへの「愛」「献身」「養育」などを象徴している。



Proserpine(絵画)

Proserpine, Toggle the table of contents
Dante Gabriel Rossetti, 1874

イングランドの画家ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの作品(1874年)。

冥界に住むローマ神話の女神プロセルピナ(ギリシャ神話ではペルセポネ)をラファエル前派の典型的なスタイルで描いています。

モデルであるジェーン・モリスとプロセルピナの姿が重なり、彼女の繊細な顔立ち、細長い手、厚い黒髪が際立っています。

ザクロの赤色はプロセルピナの唇の色と一致し、背景の常緑樹のツタは記憶と時の経過を表し、影と光のコントラストはプロセルピナの二つの世界(冥界と地上)を表します。

あかねさす柘榴の都(漫画)

あかねさす柘榴の都 1 (HARTA COMIX)

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福浪 優子
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南欧・グラナダ空港のロビーにて、
14歳の橘 夏樹(たちばな・なつき)は、不安を抱えていた。
身寄りのない彼は、
スペイン人の不愛想な叔母・アルバとこれから暮らすのだ。
知らない国で、会ったこともなかった家族との、新しい生活が始まる!

スペイン・アンダルシア州のグラナダは、スペイン語で「ザクロ」を意味し、ザクロは市のシンボルであり、市中ではさまざまなザクロの彫刻を見かけます。

POMEGRANATE(楽曲)

ハンナ・バーンの楽曲。

ハデスとペルセポネの神話をモチーフにしており、ハデスが抱えるペルセポネへの感情を歌詞にしていると考えられます。

「僕を自己中と呼んでもいいけど、でも僕は愛のために正しい事をしている。僕を強欲だと言ってもいいけど、でもこれから先が不安なんだ。君が僕の頭から離れない。君を鎖で繋ぎとめておきたいんだ。君が僕を墓(冥界)に置き去りにしたいのは知っているけれど。暗い深淵の中で君を守りたい。」(※意訳)という歌詞からは、ハデスの気持ち、痛み、絶望が感じられます。

Pomegranate(楽曲)

deadmau5の楽曲。

歌詞に登場する「僕の手の中にある3つのザクロの種」は、薬物の暗喩だと考えられます。

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